ユニ・チャームが懸案だったアジアで収益力を回復させている。10日発表の2017年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は純利益が前年同期比35%増の436億円と、1~9月期として最高益だった。肌触りの良さや吸水性を高めた紙おむつが中国やインドネシアで受けている。アジア戦略の見直しが実を結び始めたことを示す決算になった。
売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いたコア営業利益は26%増の666億円だった。このうちアジア事業は50%増の204億円と大きく成長した。1~6月期が7%減の100億円と苦戦しており、7~9月期の改善が大きかったのが分かる。アジアの売上高営業利益率は10.2%と前年同期から4ポイント改善し、第3四半期として、14年4~12月期以来、3年ぶりに2けたに戻った。
アジア市場攻略で取り組んだのが中国とインドネシアのテコ入れだ。低価格の紙おむつで多くの需要を開拓する従来路線は現地メーカーとの消耗戦になりやすい。アジア各国は所得水準の向上で、値の張る高品質品を好む消費者が増えている。そこで中国では高価格品「ムーニー」を強化し、インドネシアでは吸水性を高めるなどで品質を高めた商品に刷新した。
今回の決算では、取り組みの効果があらわれた。1~6月期の紙おむつの現地売上高は中国、インドネシアともにマイナスだったが、7~9月にプラスに転じた。両市場では7~12月期でもプラスとなりそうだ。現時点では商品の切り替えでコストが先行するが、18年12月期以降は利益面を大きく支える可能性が見えてきた。
「日本製」というブランドを生かす戦略も効果をあげ始めている。「越境EC」など日本で製造した紙おむつの中国への輸出も好調だ。日本の工場では稼働率が高まり、生産性の改善がコア営業利益を61億円押し上げた。
10日の東京株式市場では決算発表を受けた午後の取引で一時、前日比10%高の2915円まで急伸した。過去2年、収益力が低迷してきたアジアの紙おむつ事業の好転を評価する買いが集まった。「アジアでの構造改革の成果が出て、底入れが確認できた」(みずほ証券の佐藤和佳子氏)との声が出ている。
17年12月期通期の純利益は従来予想通り4%増の490億円を見込む。増益率が1~9月期よりも縮小するのは10~12月期に、18年12月期に向けて販促費を積み増すためだ。花王や米キンバリー・クラークなどとの競争は激しいが、高品質な紙おむつとしてのブランド再構築が確かになれば、成長の足取りはより確実になると言えそうだ。