激変した中国市場に対応するため、マーケティングの新たなデジタルシフトにかじを切ったユニ・チャーム。ベイビリーの次に描くこれから新興国戦略を高原豪久社長に話を聞いた。
――中国市場の今後をどう展望しますか。
「新生児の出生数は日本のおよそ20倍。長く続いた一人っ子政策の影響で出生率の回復が遅れているとはいえ、とてつもない巨大な市場だ」
「紙おむつの利用は増え、付加価値を求める志向は強まっている。品質問題が頻発する現地製品への不信感は日本人には想像できないほどだ。品質に対する信頼が盤石な日本製の紙おむつの潜在力は高い」
――いまの中国の消費者像をどのように見ていますか。
「自分の赤ちゃんにはできるだけ安心・安全なものを与えたいという両親が増えている。『ナチュラルムーニー』のような環境負荷の低い材料、ロハス的コンセプトが受けている。日本ではタブーに近い生理用ナプキンも、中国では自己表現のツールと位置づける柔軟な感性がある。商品によっては日本の消費者以上に嗜好は先進的だ」
――ベイビリーへの期待を教えてください。
「中国は日本よりもEC(電子商取引)化がはるかに進んでいる。沿海の都市部では8割以上の人がオンラインで商品を買っている。代わりに都市部の店頭では紙おむつの売り場が急速に縮小している」
「中国の消費者の価値観がとにかく多彩。アンケートなどを通じたマスマーケティングに加え、一対一のコミュニケーションからきめ細かく消費者の声を拾い上げる必要がある。ベイビリーのような双方向型のプラットフォームの重要性は非常に高い。ベイビリーは会員数が200万人を超えたけれど、ゴールまでの道のりはまだ5合目にも達していない」
――インバウンドから越境ECまで、海外市場の深掘りには多様なマーケティング戦略が求められるようになりました。
「ソーシャルメディアの進化によって、アジア全体で消費トレンドがリアルタイムで共有されるようになった。翻訳ソフトの精度も上がり、クロスボーダー型のマーケティングがますます重要になる。最先端の技術や最高級の商品は中国にまず投入し、先行したマーケティングを日本に導入するケースも出てくる」
「国境を超えて移動する消費者の動きや購買活動をフォローすることが重要になる。消費者の動きを把握するためのウエアラブル端末を開発する構想もある。先端的なデジタル実験に取り組むなら、中国が向いているかもしれない。デジタル化が進んでいる地域は東南アジアなどにもある。ベイビリーのような双方向型のプラットフォームを広げていきたい」