ユニ・チャームはアジアから欧米まで世界の約80カ国・地域に商品を展開する。日本を代表する「新興国銘柄」のグローバル展開が近年、大きな転換点に差し掛かっている。右肩上がりで伸びてきた海外売上高比率が14年12月期の64%をピークに下り坂に入っているからだ。
背景にあるのは連結売り上げの15%(16年12月期)を占める中国事業の減速。16年12月期の中国国内の売上高は15年12月期を18%下回る1078億円、営業利益は32%減の95億円だった。事業規模では日本に続く中国での苦戦が業績全体の足かせとなっている。
最大の要因は市場の変化への対応で後れを取ったことだ。従来、ユニ・チャームが中国など新興国で強みとしてきたのは現地化の巧みさ。矢継ぎ早に現地工場を建設し、コスト競争力を高めて地域密着の販路に割安なローカライズ商品を送り込む。こんな戦略でライバルに先行してきた。
しかし、中国の市場そのものが変化するにつれて、従来の必勝パターンが通用しなくなった。所得水準の上昇や消費者の成熟に伴い、日本以上に高付加価値、高価格の商品が売れるようになり、購買チャネルもリアルの店舗から電子商取引(EC)にシフト。長年培ってきた競争優位が損なわれつつある。
ベイビリーなどの先端的なデジタルマーケティングに挑戦するのはこのためだ。
ユニ・チャームにとって、中国市場の重要性は揺らぐことはない。英国の調査会社、ユーロモニターによると、中国のベビー用紙おむつの市場規模は20年に16年比53%増の約114億ドル(約1兆2300億円)に達する見通し。その潜在力は少子化で完全に頭打ちとなっている国内市場とは比べものにならない。ベイビリーを軌道に乗せて、どこまで現地のママに浸透できるのかが今後のユニ・チャームの成長を大きく左右する。