2018/10/23 「高い買い物」覆すシナジーを

 ユニ・チャームの株価が9月19日に上場来高値を更新した後、伸び悩んでいる。9月25日にタイで競合する紙おむつメーカーを約600億円で買収したと発表したが、市場の反応はいまひとつだ。

 買収したタイの紙おむつメーカーDSGT(バンコク市)は現地の競合最大手だ。ユニチャームはDSGTの持ち株会社であるDSGCL(ケイマン諸島)全株を5億3000万ドル(約600億円)で取得した。

 投資ファンドが保有していたDSGCLの株が売りに出されれば競合他社が手に入れる可能性もあった。

 ユニチャームは過去数年、競争が激化するアジアで劣勢を強いられてきた。2014年1~12月で392億円を稼いだアジア事業の営業利益は17年12月期に239億円と4割減り、同事業の売上高営業利益率も悪化した。

 一方、世界の競合が本格的に参入していないタイの売上高営業利益率は17年12月期で20%を超える水準を確保したもよう。ユニチャームにとってDSGTは競合には決して譲れない「出物」だったわけだ。

 今のところ市場の反応はつれない。株価がさえない理由のひとつが「買収価格はやや割高」(外資系運用会社のファンドマネジャー)という市場の見方だ。エクイティファイナンスへの警戒感も高まっている。会社側は今回の買収資金は「すべて手元資金で賄う」(岩田淳常務執行役員)と説明、新たな資金調達の必要はないという。

 買収したDSGCLは大人用紙おむつのブランドも持つほか、タイ以外にもマレーシアやインドネシアなど東南アジアで広く事業を展開している。金城湯池であるタイ市場の防衛に加えてそれ以外の東南アジアでもシナジー(相乗効果)を発揮していけば、「高い買い物」という市場の評価を覆せるに違いない。